夏が始まったり始まらなかったりした話

 

平成最後の夏、というのが決まり文句のようになってきていて、なんとなく「もういいって」って気持ちになっているちょっとしたひねくれ者はわたしだけじゃないと思う

 

ただまあ人間なにかが終わる時というのはどうしても感傷的になるもので

平成に生まれて、この元号しか知らないわたしとしては「平成最後の夏」っていう文字面に浸りたい気がしているのも事実

 

 

 

 

 

 

わたしはビラ配りの仕事が嫌いじゃない

 

地元のイタリアンのレストランでバイトをしていて、まだオープンして半年くらいのお店やから駅前にビラ配りに行くわけで 行くのはいつもだいたい夜の7時とか

 

実はわたし自身もそうなんやけど、街中で配ってるものを受け取るのに抵抗がある人って一定数いて もちろんにこやかに受け取ってくれる人もいるんやけど チラシを渡そうと差し出しただけですごく嫌そうな顔をされたりすることがある

 

例えば音楽を聴いていたり 頭の中で考え事をしているときに突然知らない人にものを差し出されると たぶん自分の世界を邪魔されたようでイラッとしてしまうんかなあとか分析したり

 

そうやっていろんな人を観察したり 自分もひとりでゆっくり考え事ができたりするので なかなか悪くないなあと最近思う はじめはきつかったけどな

 

 

 

 

今日のビラ配り中は自分が好きやった人のことを考えてた 

 

絶対に困らせるってわかってたのに気持ちを伝えてしまって、まあ案の定困らせたわけやけど そのときに「ありがとう」って言われたことを思い出して これはほとんど、というか100%逆ギレなんやけど 「ありがとうってなんやねんクソ」とか思ったり バンドマンと関わったら曲にされるってほんまやなあって思いながら 携帯のメモにあったその人のことを考えて書いた歌詞を見たり

 

 

夏かあ これ夏始まってるんかなあ むしろ私だけ夏、終わってない?という感じのことをぐるぐる考えてぼんやりしてたんやけど

 

 

 

急に駅前を歩いてた女の子が話しかけてきた

なにかと思ったら「すみません、地下鉄の駅ってどこですか」

 

 

わたしの地元には駅がふたつあって、今いるのとは違うほうの駅への道がわからなかったらしい

 

その子はみたところ高校生で、バスケ部かな?って感じの見た目 ショートヘアで、チームの名前が入ったポロシャツと半パン

 

 

ちょっと場所わかりにくいから一緒に行くよ って言って チラシとかメニューとかを片手に持ったまま地下鉄の駅の近くまで案内することになった

 

 

なんか高校生と話すの久しぶりかもなあ と思いながら 駅まで5分くらいの道をいろいろ話して歩いた

 

聞いてみたところやっぱりバスケ部で 夏休みやのに部活かあ 忙しいね とか この辺の子じゃないんやんなあ、今日は試合で来てたの?とか その度に「はい!」ってちょっと恥ずかしそうに答えてくれてかわいかった

 

わたしの母校もバスケ部強くて って 学校の名前を出したら 「え!いま大阪で2位ですよ!」ってうれしそうに教えてくれた

 

 

 

そうこうしてるうちに駅の近くに着いて、じゃあここで、ってなったときに「ありがとうございました!失礼します!」って大きい声で 頭を下げて言われた

 

あ、運動部っぽい と思いながら 部活がんばってね と言ったらまたちょっと恥ずかしそうに「はい!」って そこで別れた

 

その子が駅のほうに歩いて行くのをしばらく見送って 元いた場所に戻ろうとして歩き出したとき、何故かちょっと泣いてしまった 

 

さっきまで、「ありがとう」ってさあ 悔しいなあ、とか考えてたこととなんか重なってしまったんかな

 

ものすごい純粋に言われた「ありがとうございました」に心がじーん としてしまった 

 

 

 

 

元の場所に戻って、あ、ちょっと涼しくなったかなあ って気がして携帯で気温を見たのに 31℃ 

 

いや、めちゃめちゃ夏やないかい

 

 

 

 

 

こんな感じのわたしの夏、気づかんうちに始まってたけど なかなか悪くないやん とか思った夜

 

 

 

今は「オレンジ」という曲を書いてる 仮タイトルやけど

 

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わたしの思うオレンジ

 

 

いい曲、というか まず自分が愛せる曲を作るためにはこんな夜が必要やなあと思う ちょっとした感傷とちょっとした出会い 

 

また来年、平成じゃない最初の夏に 今日のことを思い出したりするんやろうか 

 

 

思い出さなくても曲は残る 

 

 

 

この事実はなによりも頼もしい