日記 2023年10月1日〜10月7日

 

 

1日

仕事が忙しくて2時ごろにお昼ご飯を食べたのになぜか夕方にはお腹が空きすぎて、終業の1時間前ぐらいから夜なに食べるかばっかり考えてた。

退勤してスーパーに行ったけど、あまりにお腹が空いてるときって、逆にこれから食べるものへの期待が高まりすぎてか、なかなか決められん。早くお腹いっぱいになりたいだけやのに。

散々悩んだ末にグリーンカレーにしたけど、結局食べるころにはいつもより全然遅い時間になってた。そういうことわざっぽい。

 

 

2日

店に英語話者の男の人2人が来て商品を買ってくれた。会計のあとどこから来たか訊いてみたら、アメリカのシアトルから来たらしい。英語なんかしばらく使うことなかったからパッとは出ん単語もあって、他のやりとりもちょっと辿々しかったなあと思う。でも、いいんだよーって感じにニコニコ話してくれて、英語に敬語らしい敬語がないからこその感覚かもやけど、会計も済んでるし、店員とお客さんっていうか、人と人として対等にコミュニケーションとってるなあとなんとなく思った。

お互いにとっての誰でもない相手との瞬間的な触れ合いがあるたびに、わたし以外の全ての人にも当たり前にこれまでの人生があるって事実があまりに途方もなくて、ちょっと気が遠くなる感じがする。私は行ったこともない、ふたりの故郷のシアトルを想像してみる。

 

 

 

3日

8時ごろに目が覚めてすぐ、朝のうちに洗濯機を回そうと思って洗剤と柔軟剤を入れてセットする。スタートボタンを押して、いつもやったらすぐにリビングに戻るのに、なんとなくそこに立ってぼーっとしてたら、うっすらカラ…カラ…みたいな音が聞こえる。なんかおかしい!!と思って洗濯物に手を突っ込んで探ったら、どっかのポケットに入れっぱなしやったらしいボールペンが出てきた。

これに、やっぱわたしってツイてるわあとうっとりできた心の調子の良さを、一日の始まりに確認できたのはよかった。

 

 

 

4日

昨日の夜は実家に泊まってた。今日は出勤やったけど、ふと思いついて、母にお願いしてお昼のお弁当を作ってもらった。たぶん高校時代以来、7年ぶりぐらい。

家を出てからはコロッケもウインナーも割高やから買わんくなったし、ほうれん草の和え物も、昔からお弁当によく入ってたソースとケチャップで味付けした野菜炒めも全部ひさしぶり。できあいでも手作りでも、やっぱり自分のお母さんの味ってある。

 

 

 

5日

タイのバンドのYONLAPAが来日してて、仕事終わりに全力ダッシュで心斎橋に向かう。

ただただ音を楽しんでるとわかる人の鳴らす音ほど気持ちのいいものってない。”i don’t recognize you”のアウトロで吸い込まれるみたいな没入感を体験したのがわたしのその日いちばん印象的な瞬間で、もともとアルバムの音源ではほかの曲がお気に入りやったけど、これも大好きな曲になった。

きっかけは忘れたけどYONLAPAを聴き始めたのはここ1ヶ月ぐらいで、正直そんなに詳しいとは言えん。でも自分の「好き」に敏感で、気になったらなんでもとりあえず行動に起こす、できるなら実際に触れてみる、っていう自分のスタンスやエネルギーは、いろんな特別をくれたなあと思い返す。Lingering Gloamingを頭から再生しながら帰りの御堂筋を歩くと、それぞれの曲に昨日まではなかった景色が浮かんだ。夜はもう寒い。

 

 

 

6日

お昼すぎに家を出て、駅へ向かう道でイヤホンを耳にさすと、あ、今日この曲やわとわかって「いちょう並木のセレナーデ」を再生する。

この曲に出会えた人生でよかったなあと思う。わたしの心にある、一番優しくてやわらかい記憶たちのいくつもの中でこの曲が鳴ってる。

2年前の冬、車の免許を取りに教習所に通ってた。技能教習の待ち合い室に座ってLIFEのアルバムを聴いていて、この曲が流れたときの不思議に穏やかな気持ちや、昼下がりの待ち合いの空気とプラスチックの椅子のひんやりした硬さをいまでも思い出すみたいに、特別じゃない瞬間を特別じゃないままに優しく残してくれてる。


秋の空気を吸い込みながらこの曲を聴くと、今日の前髪が変な方向に向いてることや、自分の顔や身体に気に入らん部分があることも、全部が全部ただただわたし自身で、それを許すとか許さんは置いといて、こうして生まれてきたこと、自分だけの世界との繋がり方で心が動くことのうれしさを、ほんまはずっと知ってるなあって気持ちが静かに溢れてくる。

 

 

 

7日

親友は窓の大きい家に住んでる。ちょっと作業しようって集まったのに、気がついたらパソコンもなにも全部傍にどけて、向こうはソファ、わたしは足を伸ばしてカーペットに座って、カーテン越しのお昼過ぎの陽射しの中で、音楽もテレビもなしに30分ぐらいふたりでおしゃべりしてる時間があった。それを意識した瞬間に、こんな風に過ごす時間ってわたしが手に入れたほんまの宝物やんと思って、なんか急にぐっときてしまって危なかった。