日記 2023年10月8日〜10月15日

 

 

8日

やっと時間ができて、数日前に発売された本を買いにいく。岡野大嗣さんの歌集「うれしい近況」。いつもの書店のだいたいこの辺やろうとあたりをつけて一直線に向かった棚で、ばっちり目当ての表紙を見つけてちょっとうれしくなる。レジで本の入った紙袋を受け取って店を出ながら、さささと早足になるのがわかった。帰りの電車の来る時間は変わらんのに、と冷静に思いながらも、早足のまま改札を抜けた。

 

 

9日

夜行バスに乗って、新宿へ向かう。わたしは窓際の席で、通路側に同年代くらいの女の子。わたしがその子の後からバスに乗りこんだときも、SAでトイレに降りたときも、ちょっと前ごめんなさい…を数回やったけど、毎回嫌な顔もせずに席を立ってくれて、感じのいい子やなあと思う。

2回目の休憩はバスの止まってる場所からトイレまでがめちゃくちゃ遠くて迷いそうなSA。午前3時過ぎくらいの真っ暗な雨の中降りたのはわたしとその子だけで、お互い声は掛けんかったけど、バスからトイレまでの行きと帰りをなんとなくお互い迷わないように気にかけてる感じに一定の距離で歩いた。

朝6時前に到着した新宿で降りる準備をしてると、わたし、まだ東京まで乗るので、ってわざわざ声をかけてから席を立ってくれた。そうやって声をかけてくれたことになんとなく絆みたいな、心を許してくれたような、一瞬のつながりを感じて、わたしも、ありがとうございます、のあとにもう一回会釈をしてから降りる。

 

 

10日

新宿駅のホームで朝の電車を待つ。アナウンスで「今度の、12番線発の電車は…」と流れて、「つぎの、」じゃないんやなあと思う。調べてみると、関東での「こんど・つぎ」表記って、地域ネタの定番らしい。誰も気づいてないやろうと思ったのに。

 


11日

毎年の秋から冬あたりの恒例行事になってきてはや4年目、今年も胃腸炎になる。初の東京編。今回は昨日の夜にひさしぶりに会った友達や新しくできた友達と下北で朝まで飲んでた二日酔いとのダブルパンチで、気持ち悪さと腹痛がちょっとましな身体の角度を一回見つけたらしばらくそこから動かれんかった。

意識を逸らすために好きなYouTubeの動画を再生する。デカい音で全部を誤魔化したいけど、耳がしんどくなく受け入れられる限界の音量みたいなのがあって、かなり遠いところで大喜利のやりとりを聴く。

 


12日

友達が、たぶんこのバンド好きやと思うってAppleミュージックのスクリーンショットをラインで送ってきた。普段はお互い用事があるときにしか連絡せん友達が、その曲を見つけて、わたしを思い出して、わざわざ送ってくれたっていう出会い方をした時点で、好き嫌いとは別のところで、わたしにとっては意味のある音楽になる。

 


13日

さすがにTシャツで寝られる気温じゃなくなってきて、パジャマの長袖を解禁する。しばらくしまってた服特有の、引き出しのにおい。

カバーもかけずに出しっぱなしならわかるけど、ちゃんとしまってたものがちょっとほこりっぽくなるのは不思議やなあといつも思う。毎回気にはなるけど調べるほどでもなくて置いてることのひとつ。

 


14日

先月まで通っていた短歌の教室の課題を提出するのをすっかり忘れてた。

わたしにとっての短歌とは、の問いに答えながら、短歌を作る側の世界に飛び込んでみてよかったなとじんわり思う。日記や備忘録に近いように見えて実はそうじゃなくて、自分の五感と、世界と繋がっているすべての部分を研ぎ澄ませて、わたしだけの感じ方で心の動いた瞬間にまっすぐ向き合うための手段でもあり、向き合った結果でもある、みたいな感じ。

 

 

15日

職場のお姉さんとシフトのことを話してて、ちょっと先のことでも大事な予定あれば早めに言っておいたらいいよ、マネスキン見に行く日とか…って気にしてくれる。今年の12月のマネスキンのチケット当たったんですよね〜って数ヶ月も前にちらっと話しただけのことを覚えててくれてる。